星乱拳客伝 外伝 −三つ目−

宇宙貨物船ブザリアジビリ号。
その旧式の巨船が減速し・・・止まった。
目的地である宇宙ステーションは、まだ遠い、
この辺境宇宙で・・・
一体、何が・・・

星乱拳客伝 外伝 −三つ目− 第10巻

COLD METAL



第2章 space pirate
海賊


辺境の宇宙を巨大な宇宙貨物船が行く。
その船体は、大小、形状も色も様々なコンテナで被われていた。
宇宙貨物船ブザリアジビリ号。
それが、この船の名前である。
行き先は中継ステーションFR3。そこで、コンテナの受け渡しを行う予定である。
いつもと変わりないルーチンワーク、今回もそうなる筈であった・・・

「船長、後方から急速接近する物体があります」

オペレータのウォードである。

「ウォード。十分な距離をとるように航路を変更」
「ヘイズ。接近中の物体の正体を確認しろ」

3人だけのブリッジが慌ただしくなる。

「船長。航路変更確認しました」
「後方の物体との距離、徐々にひらきま・・・せん」

だだっ広い、ブリッジに緊張感が疾る。

「・・・ヘイズ。後ろの奴の正体は分かったか」

「まだ確認出来ません」

「ウォード。ダミーユニットと救難信号、スタンバイしておけ」

「了解」

「船長。確認できました」
「3隻います。最後方に中型貨物船。前方に小型と中型のクルーザーです」

「中型のクルーザー・・・色は何色だ」

「色ですか?合成映像なので何とも言えませんが、2番サブモニタに映像出します」

「赤い中型クルーザー・・・」

全身の力が抜けたかのようにシートに沈み込む船長。

「・・・カラミティ・ジェーン」

たっぷり5秒ほど中空を睨んで、おもむろにシートに座りなおした船長は、

「ウォード。ダミーユニットはいくつある」

「8つ、ありますが」

「ジャミングと同時に8つすべて射出しろ」

「全部ですか?」

「そうだ、準備出来次第すぐに実行しろ」

「了解しました。ジャミング開始」

メインモニタにその様子が映し出される。

「ダミーユニット射出します」

ダミーユニットを表す緑の光点が扇状に展開する。
メインモニタを食い入るように見つめるブリッジの3人。

「振り切れますかね・・・」

ヘイズの言葉がブリッジの空気を更に堅くした。

「・・・すいません」

緑の光点が一つ、また一つと画面の外に消えて行く。

「だめか」

メインモニタ上の赤い光点が後方からゆっくりと中心に近づくのを見て、船長がつぶやいた。

「船長。後方の船から急接近する物があります」
「接触まで10秒」

「回避運動をとれ」

「間に合いません・・・5秒・4・3、きます」

「・・・・・・」

「何だ?」

「分かりませんが、船体に異常はありません」

船体の各部をチェックしながらヘイズ答える。

「船長。通信が入っています」

「ジャミングはどうした」

「最大です。はいる筈はありません・・・でも」

「・・・繋(つな)げ」

「了解。繋ぎます」

通信回線を開く、ウォード。

「この船は貰った。生きていたけりゃ船を停止させろ」

強力なジャミングの中、そうとは感じさせない明瞭な音声が響いた。

「いったい、何処から・・・」

言いながらウォードがコントロールパネルから顔を上げると、
ビルドアームが船の外側からブリッジを覗き込んでいた。




次章予告

海賊カラミティ・ジェーンにより、

停船を余儀なくされた、宇宙貨物船ブザリアジビリ号。

略奪行為を阻止する手段はここには・・・ない。

次々に繰り出される、海賊のビルドアーム。

宇宙貨物船ブザリアジビリ号の運命は・・・

そして、コンテナの中の蘭丸たちの運命は・・・

如何に。

外伝 第10巻
次章:第3章 the silent fight 静なる闘い

『文句(もんく)があるなら、かかってこいよっ』
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