星乱拳客伝 外伝 −三つ目−

港へと続くエレベーターまで、あと一歩と言うところで、
黒い巨鳥に追いつかれた、碧い魔人。
辛くも一匹を撃退した蘭丸であったが、
背中に突き刺さる殺気に振り返ると、
今まさに、
巨鳥が襲いかからんとしているところであった。

星乱拳客伝 外伝 −三つ目− 第9巻

WALK ON THE WILD SIDE



第10章 Black Business IX 仕事(9)

クエぇ

緑の魔境に巨鳥の鳴き声が響く。
その目前に蹲(うずくま)る碧い魔人に向かって、
今まさに、その嘴(くちばし)が打ち込まれようとしていた。

「しゃぁ」

黒い巨鳥を確認した刹那、屈んだ姿勢からタックルをかける要領で、
巨鳥へ向かって左肩から突っ込んでいく。

疾る巨鳥の鋭利な嘴・・・その軌道上には碧い魔人の頭部が・・・

グワぇぇ

間一髪とはこの事か、碧い歩ヒョウのタックルは巨鳥の嘴をかいくぐっていた。

(ぬっ)

碧い歩ヒョウのタックルに気絶でもしたのか、巨鳥がのしかかってくる。

「このやろう・・・」

悪態をつきながら胴体の下から這い出す碧い歩ヒョウ。
上半身ようやく這い出させた蘭丸に・・・

クエぇ

そこにもまた、黒い巨鳥が待ち構えていた。

(なっ・・・)

目前の巨鳥に対して、これ以上這い出す事を止め、
両手と上半身の自由を確認する蘭丸。

クエぇぇぇ

さらに一声鳴く、黒い巨鳥。

「来ぃ」

仰向けで巨鳥の一撃を待つ、碧い歩ヒョウ。

ぇぇぇぇ・・・げッ

必殺の一撃はやって来なかった。

(・・・?)

黒い巨鳥は何か考え事でもあるかのように、
何か困った事でもあるかのように、小首をかしげていた。

(なんだ・・・?)

いままで気付かなかったが、
巨鳥の首の根本あたりに、鋭利な黒い突起物が突き出ていた。
表面に独特の模様を浮かべた黒い鋼。
ダマスカスブレードである。

「蘭丸さん、ですか?」

唐突に『糸電話』から声がした。

「ああ・・・」

ようやく巨鳥の下から這い出した碧い歩ヒョウ。
どう、と倒れる黒い巨鳥の向こうに黒い鋼の長剣を手にした紅い歩ヒョウが立っていた。

「天道さんは、どうしました?」

天道の行方を尋ねる紅い歩ヒョウの主は間違いようもない・・・
ラルクであった。




次章予告

蘭丸とラルクの邂逅から数十分前。
一台のビルドアームが港へ向かっていた。
8時間に一度の見回りの時間では無いは筈だが・・・
港に係留された、天道の貨物船。
このままでは・・・

外伝 第9巻
次章:第11章 Black Business X 仕事(10)

『文句(もんく)があるなら、かかってこいよっ』
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