星乱拳客伝 外伝 −三つ目−
襲いかかる巨鳥を一本の針で射止めた天道。
残る巨鳥は何匹いるのか。
そして、
前後に分かれた蘭丸は・・・
WALK ON THE WILD SIDE
第6章 Black Business V 仕事(5)
一、二、三。
殺気は三つあった。
正面に一つ。
やや遠く左側に一つ。
一番近い右側に一つ。
ざっ
蘭丸は迷うことなく右に疾った。
複数の敵と相対するとき、囲まれ間合いを詰められる前に、
各個撃破するのは蘭丸にとって常識であった。
急接近する殺気。
木々の向こうの殺気が、一気にグワッと膨らむ。
キゥン
右手をアンダースローの要領で下方から振り上げると、分銅がワイヤーの尾を引いて疾った。
カァーン
十数メートルの距離を飛翔した分銅が、木立に堅い音を響かせる。
その音に殺気が拡散した刹那・・・
キゥン
分銅を引き戻しつつ、更に加速する碧い歩ヒョウ。
しかし引き戻した分銅は手元に帰さず、不意に上体を沈めるや否や、
キャぅン
上体を右に回転させつつ裏拳を放つ要領で分銅を左方へ疾らせた。
だが、敵は正面。その距離は約5m。
黒い巨体に光る2つの目が碧い魔人を見つめていた。
クウぇぇぇ
一声鳴くと、5mの距離を一気に詰める巨鳥。
「かかったな」
言うと蘭丸は間一髪、巨鳥の一撃を避けつつ、
半身のまま右方へ跳んだ。
ぴぅン
ワイヤーが木立と碧い魔人との間で悲鳴をあげる。
次の瞬間、ワイヤーを握った右手に衝撃が・・・
きゃぅん
衝撃が消え去り左方を振り返ると、そこには体長5mほどの黒い巨鳥が倒れていた。
その首は滑らかな断面を見せつつ半ばから切り落とされており、未だ脈打つ鼓動に合わせて、
信じられない量の血液が流れ出していた。
『射綱』である。
[技の名前:射綱(しゃづな)
技の説明:蘭丸の流派の特器術である分銅とワイヤーを使った技である。
今回のように、木と歩ヒョウとを結んだワイヤーで敵を葬る場合や、
あらかじめワイヤーを仕掛けておき、ブービートラップ的な使い方をする場合もある。
また、分銅とワイヤーを使った移動術も同じく『しゃづな』と言うが字は『斜綱』と書く。]
「わりいな」
首のない巨鳥に一言いって、右腕を軽く振り分銅を戻す碧い歩ヒョウ。
その姿は、地獄の三つ目の悪鬼のようであった。
次章予告
離ればなれになった、天道と蘭丸。
二人を襲う、黒い巨鳥の群。
しかし、不意に姿を消す巨鳥達。
一体、
なにが・・・
外伝 第9巻
次章:第7章 Black Business VI 仕事(6)
『文句(もんく)があるなら、かかってこいよっ』
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