星乱拳客伝 外伝 −三つ目−

実験プラントに忍び込む二体の『歩ヒョウ』。
乗ってきた貨物船を係留すると、
ハッチを全開にしたまま貨物搬入用のエレベータに向かう。
タイムリミットまで残り4時間弱。
巨大実験プラントの中で待ち受けるものは、
果たして・・・

星乱拳客伝 外伝 −三つ目− 第9巻

WALK ON THE WILD SIDE



第4章 Black Business III 仕事(3)

密林。

高さ十数メートルの巨木が林立する緑の魔境。
ジャングルである。

しかし、ここは辺境の実験プラントではなかったか・・・
見上げれば雲の向こうに緑が透けて見える。

「ここから目的地まで約30分」
「作業時間を含めても2時間後には帰途についている予定です」
「邪魔が入らなければですが・・・」

そう言うのは、黒い歩ヒョウの天道である。 プラント進入の際に使った針は左腕には戻さず、顔面の中心部よりやや下方にある切れ目に挟み込まれていた。
その様子はまるで、針を口にくわえた針師のようであった。

「邪魔?」

問い返すのは、碧い歩ヒョウの蘭丸である。
碧い身体に、三つの目。束ねられた銀髪は異形の仏像のようであった。

「私が先導しますので、後方の警戒よろしくお願いします」

緑の魔境に滑り込む黒い歩ヒョウ。
その歩みは、風のように静かで、しなやかで・・・
例えるなら漆黒の魔獣、黒ヒョウであった。

一方の碧い歩ヒョウの蘭丸も後方を警戒しつつ続いた。
しかし・・・

(早ぇな)

ともすると見失いそうになる黒い歩ヒョウ。
どれほどの時間がすぎたろう、
5分。
10分。
それとも目的地に着く頃か・・・

「邪魔が入ったようです。私は前を・・・」

警告された時には、蘭丸も気付いていた。
ヒリヒリするような無言の圧力。

「後ろは任せてくれ」

口にくわえた針を逆手で握る、漆黒の歩ヒョウ。
腰の隠しからワイヤーを引き出す、碧い歩ヒョウ。

支度は、整った。




次章予告

緑の密林を行く、『天道』と『蘭丸』
目的地まで、30分あまり・・・
突如として現れた邪魔者。
彼らの『目的』を阻む者か、それとも・・・
背中合わせの2体の魔人を取り囲む者とは何者?

外伝 第9巻
次章:第5章 Black Business IV 仕事(4)

『文句(もんく)があるなら、かかってこいよっ』
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