星乱拳客伝 外伝 −三つ目−

漆黒の宇宙空間に浮かぶ、巨大な資源小惑星。
表面には人工建造物や作業口らしい穴が無数に見受けられた。
その中の少し大きめの穴に、一隻の小型宇宙貨物船が入って行く。
辺境の宇宙そして、寂れた資源惑星と旧式の宇宙貨物船。
どこにでもある、ありふれた風景。
宇宙貨物船にしがみついた2つの巨大な人影を除いては・・・

星乱拳客伝 外伝 −三つ目− 第9巻

WALK ON THE WILD SIDE



第3章 Black Business II 仕事(2)


闇。

月光、星の瞬きさえも無い真の暗闇。

そして数十秒に一度点る、赤い光。
ぼおっと浮かび上がる2つの異形の人影。

『歩ヒョウ』

それは人型の巨大器械であった。

また点る、赤い光。
浮かび上がる、宇宙貨物船の無骨な姿。

また点る、赤い光。
『歩ヒョウ』の足下の人工物体しかし、その大きさは・・・

ここは辺境の宇宙。
資源小惑星の中の隠された実験プラント。
そのハッチの横にしがみついている『歩ヒョウ』には、

「では始めます」
「今から4時間、このプラントから外部への通信は出来なくなっています」

作戦の開始を宣言したのは、黒い歩ヒョウの『天道 歩』であった。

「このハッチのロックも外してあるって寸法か」

碧い歩ヒョウの『榊 蘭丸』である。

「いえ、ロックは私が外します」

天道が言うと、黒い歩ヒョウの右手が左手の甲から何かを引き出した。

(何?)

キラッ

赤い光が反射するその物体は・・・針?
黒い歩ヒョウの肘から手首までの長さ約1mほどもあるだろうか、
それは紛れもない針であった。
しかし、この針で何をしようと言うのか。
針を出し終えた左手をコロニーの壁面に這わせる、
ほどなく止まった左手の人差し指と親指の間に、右手に握られた針先が近づく。
そして、スッと滑り込んだ。
10cm、20cm・・・
さらに50cmも入っただろうか、

ゴォォォォォ

低い振動を歩ヒョウに響かせつつハッチが開いて行く。
たっぷり30秒ほどかけてハッチが全開になると、潜り込ませた針を一気に引き抜き、
天道が言った。

「では、参りましょう」




次章予告

実験プラントに忍び込む二体の『歩ヒョウ』。
乗ってきた貨物船を係留すると、
ハッチを全開にしたまま貨物搬入用のエレベータに向かう。
タイムリミットまで残り4時間弱。
巨大実験プラントの中で待ち受けるものは、
果たして・・・

外伝 第9巻
次章:第4章 Black Business III 仕事(3)

『文句(もんく)があるなら、かかってこいよっ』
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