星乱拳客伝 外伝 −三つ目−
仕事の依頼で呼び出された蘭丸。
ここは・・・
『フェイロン闘技場』
軽い疑念を抱きつつも指定された部屋へ向かう蘭丸。
そこで、待ち受ける者は・・・
WALK ON THE WILD SIDE
第1章 Welcome to the other side もう一つの『フェイロン』
「『ヒョウ局』という言葉をご存じですか?」
薄暗い部屋の中で蘭丸は聞いた。
ここはフェイロン賭博場のとある一室。
仕事の依頼で呼び出された蘭丸であったが、
「はあ・・・」
目前の少年の言葉を扱いかねた蘭丸の言葉に、少年が続けた。
「今日は、お仕事の話でお呼びしたんですよ。『ヒョウ師』蘭丸さん。」
(なに?)
(何でこいつが知ってるんだ・・・)
驚きと疑念に満ちた目で少年を見つめる蘭丸。
「ちょっと、調べさせてもらいました。」
「ランメールこと、榊 蘭丸(さかき らんまる)。」
「年齢、27歳。」
「職業、ビルドアーム修理業。」
「副業、フェイロンの闘士。」
「父:榊 一(さかき はじめ)と母:百合絵(ゆりえ)の長男。」
「父方の祖父は、あのウィルテイカーのクルー、橘 泰吾(たちばな たいご)。」
「母方の祖父は、あの十二拳聖の一人、榊 藤十朗(さかき とうじゅうろう)。」
「そして、あなたは三つ目の『歩ヒョウ』=『レン』を受け継いだ『ヒョウ師』、その二代目。」
「よく調べたもんだ、」
「しかし榊のじいさんは、十二拳聖に数えない連中の方が多い。」
「それに、二代目を継いだ覚えは無い。」
蘭丸の返答に、目前で微かな笑みを口元に浮かべた少年が、
「では、最後の二点を除いて間違いありませんね。『榊 蘭丸』さん。」
「仕事の話じゃないんなら、帰らせてもらうよ。」
「慌てないで下さい。」
「仕事の話ですよ・・・『ヒョウ師』としての、」
(・・・?)
「話は戻りますが、『ヒョウ局』をご存じですね?」
「ああ、話には聞いたことがある。」
「たしか、上泉さんのところに・・・」
「よくご存じですね」
「正確には『ヒョウ局』とは違うのですが、そのような仕事があるんです。」
「その仕事を手伝えと?」
「はい。」
「・・・返事は今ここで?」
「はい。」
「仕事の性格上、返事をしていただくまでは細かい仕事の内容はお知らせ出来ませんが、」
「先ほども申し上げましたが『ヒョウ局』とよく似た、」
「そうですね、観客なしのフェイロンの試合みたいなものでしょうか。」
少年は言う、そして・・・
「申し遅れました。私、『フェイロン』総支配人の『天道 歩(てんどう あゆむ)』と申します。」
どうぞよろしくと、差し出された少年の右手。
一瞬の躊躇。
「よろしく。」
差し出される蘭丸の右手。
そして、契約は交わされた。
次章予告
虚空に浮かぶ宇宙貨物船。
その船体にしがみつく2つの巨大な人影。
『碧』と『黒』
『蘭丸』と『天道』
二体の『歩ヒョウ』
二人の『ヒョウ師』
その行き先は、その目的は・・・
外伝 第9巻
次章:第2章 Black Business I 仕事(1)
『文句(もんく)があるなら、かかってこいよっ』
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