星乱拳客伝 外伝 −三つ目−
ゆらり。
立ち上がる紅い歩ヒョウ。
ゆらり。
右手に紅い刀を握りしめて。
ゆらり。
『紅い』歩ヒョウ。
『紅い』刀身。
その『紅』は・・・
FIGHT THE GOOD FIGHT
第5章 Red Blast II 紅い旋風 (2)
20mほどの距離をおいて、立ち上がる紅い歩ヒョウ。
その右手には、身体と同じ紅い色の刀が握られていた。
そんな紅い歩ヒョウを三つの目で睨み付ける蘭丸。
(あんなもん、仕込んでやがったか)
呟いた蘭丸が言っているのは、ラルクの右手の一刀である。
その長さと柄(つか)の造りからして、左腕に仕込んであった長物であろう。
しかし・・・
あれだけの長物を不可視の速さで抜き打つラルクを讃えるべきか、その正体も知らず、不可視の刃を一度ならず二度までもしのいだ蘭丸をこそ讃えるべきか。
おおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ
フェイロン闘技場に低い、この闘技場が身震いしたかのような、歓声とも、どよめきとも取れる響きが溢れた。
もう誰もこの試合の賭けの事は、眼中に無かった。
そこにあるのは、
どちらが勝つのか、
どちらが強いのか、
いや、そんな事さえどうでも良かったのかも知れない。
この戦いを一瞬たりとも見逃すまい、見逃してなるものか、ただ、それだけだった。
しかし、そんな戦いの決着も時間の問題かと想えた。
片や、必殺の一刀を片手に立ち上がる紅い『歩ヒョウ』=『ラルク』。
片や、左足を負傷して立て膝を付いている三つ目の碧い『歩ヒョウ』=『蘭丸』。
(迂闊だったぜ)
蘭丸は思った。
この試合が始まるときに交わした『光信』。
この試合は『ヒョウ師』の戦いではなかったか。
(畜生)
何時しか『ヒョウ師』としてではなく、フェイロンの『闘士』として戦っていた自分に気が付いた。
ぎりっッ
強く奥歯を噛み締める。
鉄の味がした。
何時かは定かではないが、口中を切ったらしい。
「へっ」
何かが吹っ切れたのか、またあの堪らない笑みを浮かべて蘭丸が、
「やっぱり、そうでなくっちゃあな」
碧い『歩ヒョウ』が、
三つ目の『歩ヒョウ』が、
『ヒョウ師』=『蘭丸』が立ち上がる。
次章予告
20mの距離を挟んで対峙する。
『歩ヒョウ』と『歩ヒョウ』
一刀を片手のラルクと、片足を負傷した蘭丸。
唸りを上げるのはラルクの一刀か・・・
はたまた、蘭丸の拳か・・・
この劣性を覆す事が出来るのか蘭丸よ。
外伝 第8巻
次章:第6章 Red Blast III 紅い旋風(3)
『文句(もんく)があるなら、かかってこいよっ』
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