星乱拳客伝 外伝 −三つ目−
フェイロンの闘技場に、時代遅れの魔人が二体。
巨大な仏像が如く、
神話の巨人が如く、
紅 と 碧
二体一対の彫像の様な『歩ヒョウ』が走り出す。
この二体、如何なる戦いを・・・
THAT'S NOT ENOUGH
第3章 demons I 魔人二人(1)
ワああぁぁぁッッッッ
フェイロン賭博の闘技場。
影が伸びることも許さぬ無数のライトの下、2体の魔人が今、打ち合おうとしていた。
碧い魔人は右中段回し蹴り、紅い魔人は左ストレート。
ガギしぃぃぃぃぃぃぃ
ビシィィィ
互いに渾身の一撃を互いの身体に叩き込んだ。
碧い魔人の腹部に、紅い魔人の拳がめり込み、紅い魔人の脇腹に、碧い魔人の脚がめり込む。
みしィィィィ
碧い魔人の内側でHTの軋みを聞く男=『蘭丸』
「たまらねぇな」
腹部に衝撃を感じながら、繰り出した右脚を引き戻す。
互いにバランスを崩しつつも、紅い魔人=『ラルク』は、さらに右ストレートを繰
り出した。
ダッ
左腕でラルクの右ストレートを内側にさばきながら左に回り込む。
そして、
ヘャッ
伸びきったラルクの右腕の上を蘭丸の右拳がラルクの咽の辺りめがけて疾る。
ガッッッッ
右肘の上から打ち下ろされる蘭丸の右拳を、伸びきった右ストレートで右斜め上方に振り上げながら引き戻しつつ、跳ね上げ、身体を右方に回転させながら、距離の近くなった蘭丸に左のフックを叩き込む。
「まだ、まだッ」
右拳を跳ね上げ、蘭丸の右脇に潜り込んでくるラルクに対して蘭丸は、跳ね上げられた右拳を引き戻しざまラルクの首筋にあてがい、右膝を跳ね上げた。
ガシィッ
ラルクの左フックが蘭丸の脇腹を打つ。
ギシッ
蘭丸の右膝がラルクの頭部を打つ。
左フック、左フック、左フック。
右膝、右膝、右膝。
ドッシ、ドッシ、ドッス。
互いに3発打ち込み、タイミングを合わせたかのように、距離を取る。
そして、互いの緊張が緩んだ刹那・・・
セヤッ
蘭丸は、左の上段前蹴りを放ちに行くが、ラルクもまた、左のハイキックを放とうとする所だった。
「やるな、あんた」
更に距離を取って、蘭丸は言った。
「あんたこそ」
ラルクが返す。
ヒョウ師の戦いは続く・・・
次章予告
一瞬の油断も入る余地のない、
熱く、
研ぎ澄まされた、
時間の中で・・・。
魔人達は戦う。
その一瞬に、全てを賭けて。
その一瞬に、全てが在るとでも言うかのように・・・
外伝 第7巻
次章:第4章 demons II 魔人二人(2)
『文句(もんく)があるなら、かかってこいよっ』
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