星乱拳客伝 外伝 −三つ目−

すべての試合が終わった闘技場。
出口へと向かう人波。
しかし、その中に逆方向へ向かう一人の男がいた。
この男、何処かで・・・

星乱拳客伝 外伝 −三つ目− 第6巻

DON'T LOOK BACK



第4章 The Name of Sakaki 『榊』の名


男の名前は『榊 蘭丸(さかき らんまる)』
身長177cm。
体重78kg。
その無駄のない筋肉で鎧われた身体は、猫科の肉食獣を思わせ、20代後半なのにもかかわらず、その少年のような堪らない笑顔は、人々の心を引きつけて止まなかった。

「ども、『SBR』っす。」

ここは、フェイロン賭博の闘技場の中。
蘭丸は依頼のあったビルドアームを引き取りに来た、修理工場の人間だった。

「ああ、榊さん。どうも。」

「まいど、どうも。」

慣れた様子で、挨拶を交わす相手の男はマッチメーカーであった。

「なにが、まいどだぁ」

近くの長椅子で、うなだれていた男がいきなり立ち上がるなり、殴りかかってきた。

「おいおい」

大振りな右のパンチをあっさりかわして、足を引っかける。

ドッス

ひっくり返った男の背中を右足で踏みつけると、

「すいませんね、榊さん。やられちゃって、気が立ってるんですよ。」

「いつもの事。当たらなけりゃ、どって事ないっすよ。」

「今日は17番に置いてありますから。これカギです。」

カギを受け取ると、足下で呻いている男に、更に一撃加え、

「まいどー」

と、17番のガレージへと廊下を走りだした。

(17番は・・・右だなっ)

突き当たりのT字路を右に曲がると・・・

どんっ

「失礼」

「すいません」

言って走り去ろうとする蘭丸の背中に、声をかける男。

「蘭丸さんじゃないですか。」

(どうして・・・。まっ、いても不思議じゃないな。)

「ちょうど良かった。」

いつもの、あのマッチメーカーである。

「次の対戦相手は・・・」

「会うたびに、次があるんだな」

「『歩ヒョウ』です。」

「・・・?」

「今話題の『歩ヒョウ』=『ランメール』VS未知の強豪『歩ヒョウ』ってね」

(・・・)

「今から、楽しみですよ・・・」

尚も続く、マッチメーカーの話。
しかし、蘭丸には聞こえていなかった。

(『歩ヒョウ』・・・)

(おもしれぇ・・・)



次章予告

店の片づけを終えたラルクに

『R』からの呼び出しがかかる。

今日の呼び出しは、

提出書類の書き直し?

間違えた注文の事?

それとも・・・

外伝 第6巻
次章:第5章  in the office 事務所にて

『文句(もんく)があるなら、かかってこいよっ』
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