星乱拳客伝 外伝 −三つ目−
『R』とラルクの目前で、
巨大なビルドアームが打ち合う。
戦いの中へ身を投じるべく木星圏からやってきたラルク。
その胸の内に去来するのは、
希望か、
絶望か、
はたして・・・
DON'T LOOK BACK
第3章 Fay-Long Ballroom II フェイロン賭博(2)
「ここよ」
フェイロン賭博場の中段あたりに席を見つけた『R』。
「ここですか」
(もっと前だと思ったのに・・・)
確かに、最前列から離れすぎている。
「まあ、とりあえず座って。」
「はあ」
いつものように、気のない返事をして席に着くラルク。
今は、試合と試合の間のいわば休憩時間である。
「何か飲む?」
「いえ、けっこうです。」
「試合が始まったら、ゆっくりしてらんないよ」
じゃあと、ラルクはオレンジジュース、『R』はコーヒーを購入した。
10数分後・・・
ガキーン
目の前で繰り広げられる、ビルドアームどうしの戦いを見てラルクは、
(それでか・・・)
確かに、ここは特等席だった。
これ以上前だと近すぎるのである、それ以上に危険だとも言えるのだが・・・
しかし、
戦っているビルドアームもそうだが、周りの観客の勢いはどうだ、口から泡をとばし、腕を振り回し、足を踏みならす、人、人、人。
この熱気は、まるで、ムエタイか何かのスタジアムにいるようだ。
そう、まさに闘技場である。
おおーー
・・・数時間後
最後の試合を見終わった『R』とラルクは、今日の試合の話をしながら出口へと向かった。
出口へ向かう人波に飲み込まれる二人。
その人波に逆らって歩く一人の男がいた。
この男、普通ならば罵声を浴びせかけられるところであるが、この人波をかわす風でもなくかわし、避ける風でもなく避けていた。
何気なく・・・そう、その男は『何気なく』その歩を進める。
どん
その男と、軽く肩がぶつかった『R』。
「失礼」
「ごめんなさい」
『R』は軽く言って歩みを進める。
ぶつかった男の歩みも止まらない。
次章予告
すべての試合が終わった闘技場。
出口へと向かう人波。
しかし、その中に逆方向へ向かう一人の男がいた。
この男、何処かで・・・
外伝 第6巻
次章:第4章 The Name of Sakaki 『榊』の名
『文句(もんく)があるなら、かかってこいよっ』
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