星乱拳客伝 外伝 −三つ目−
実験室の片隅に立つ、ラルク。
目前の紅の物体。
『ヒョウ師』=『ラルク』に課される、
簡単な審査とは?
薄暗い実験室に何が起きようとしているのか・・・。
YOU JUST GOT LUCKY
第4章 the examination II 審査(2)
カラ、カラ、・・・・・・
薄暗い実験室に乾いた音がこだまする。
カラ、カラ、カラ、・・・・・・・・・
ラルクを飲み込んだ紅い物体は質量保存の法則を嘲笑うがごとく、その大きさを変えて行く。
そして、
カラッ
不意に音が止んだかと思うと、そこには紅い『歩ヒョウ』が立っていた。
カッ
「準備は、いい?」
突然、照明が灯ったかと思うと20mほど上方にあるガラス窓の向こうから、スピーカーで呼びかけてきた。『R』室長である。
「出来てるよ〜」
どうせ聞こえてないだろうと、小さく軽口を叩きながら、OKのサインを出そうとすると、
「了解。じゃ説明するわね。」
『R』室長の声が響く。
(げっ、聞こえてるの)
気にした風もなく『R』室長は続ける、
「簡単なテストよ、そこにいるビルドアームを倒して。無人機だから、バラバラにしても構わないから。」
ラルクとは反対側の実験室の壁際に、一台のビルドアームが控えていた。
(なんだこいつ『NA』かよ)
『NA』−(Not Alphabetical:正式に登録された物の場合、登録番号の頭文字がアルファベットになるのに対して、実験用、試作機などは、その頭文字にアルファベット以外の文字を使う事からこう呼ばれるようになった。俗称である。)
そのビルドアームは、『タイプ5・ブレス』と呼ばれる機体をベースにした実験機のようであった。
緑色の胸部と左肩に大きく黄色で『β884』と描いてあり、ボディの至る所にマーキングや継ぎ接ぎ、装甲版なども市販の物とはかなり違っていた。
グゥ−−−ン
低いモーターの駆動音が次第に高まり、だらりと下げられた『タイプ5・ブレス』独特の長めの両腕が、上がって行く。
「じゃ、始めて」
『R』女史の短い言葉で、審査は始まった。
次章予告
巨大な実験室で『審査』を受ける、ラルク。
対するは、『タイプ5・ブレス』実験機。
そのボディに刻まれた、数々の刻印は何を意味するのか・・・
外伝 第5巻
次章:第5章 the Party 狂宴
『文句(もんく)があるなら、かかってこいよっ』
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