星乱拳客伝 外伝 −三つ目−
平凡な研究者から、一転。
数奇な運命を歩む事になった、ラルク。
今まで隠し続けていた事実を突きつけられた上での辞令。
そして、審査・・・。
何処へ行くのか、『ヒョウ師』=『ラルク』よ。
YOU JUST GOT LUCKY
第3章 the examination I 審査(1)
あの日から、一週間。
あの日?
3Sブロック−B7−FL会議室に呼び出された、あの日である。
突然の辞令を受けた、あの日である。
自分が『ヒョウ師』である事を突きつけられた、あの日である。
あの日の翌日から、研究中の素材の引継ぎ作業、引っ越し準備、挨拶周り、最後は、昨日の送迎会。
一見普通の、しかし・・・
いつも口うるさいグループリーダーが、嫌み一つ言わないのは何故?
部長が、目を合わせようとしないのは何故?
何か・・・
本当はみんな何もかも知っていて、何も知らない振りをしているような・・・
そして今、ここにいる。
3Sブロック−B7−B実験室、小学校の体育館ほどもあるだろうか、天井はさらに高い。
彼の実験室、いや・・・
元、彼の実験室で見慣れた測定機や、何に使うのか解らない機械が、天井から吊り下げられ、壁に埋め込まれ・・・
無数の電子の視線がラルクに突き刺さった。
そんなラルクの思いを知っているのか、
「ラルク君、準備おねがい。」
左隣から声がかけられる。
『R』室長、新しい上司である。
「私は、上から見てるから。細かい指示は上から出します。」
きびすを返して、向かって左側にあるエレベータに向かう室長に、
「はい」
と答えて。
薄暗い、しかし測定機の赤や緑のランプ類で燐光を帯びたかのような実験室。
その一隅に向かって歩き出すラルク。
そこへ、向かうのが当然であるかのように。
そこに、何があるのか知っているかのように。
コッ、コッ、コッ、コッ
コッ、コッ
ラルクがその歩みを止めた目前には、大きめの冷蔵庫ほどもあるだろうか、巨大な風呂敷包み状の物体が置かれていた。
その物体は紅色をしていた。
次章予告
実験室の片隅に立つ、ラルク。
目前の紅の物体。
『ヒョウ師』=『ラルク』に課される、
簡単な審査とは?
薄暗い実験室に何が起きようとしているのか・・・。
外伝 第5巻
次章:第4章 the examination II 審査(2)
『文句(もんく)があるなら、かかってこいよっ』
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