星乱拳客伝 外伝 −三つ目−

それから、約1ヶ月後。
ビルドアームを客に届けた先で
待ちぼうけを食わされた蘭丸。
時間を潰すために訪れた砂浜に現れた黒い影。
奴は一体、何者?



第3章 beach 砂浜


それから、1ヶ月後。

GABRIEL Stの125番地。ちょうどMILTON湖の湖畔近くの、高級住宅街である。
2週間ほど前の依頼で、もっと早くに届けられたのだが期日指定で今日になった機械である。
定期点検で預かったが、使った形跡は無く、ほとんど確認だけの点検で済んだ。

(まったく、金持ちは・・・。)

と、言うのが正直な所だろう。
その金持ちは、日時を指定してきたにもかかわらず、担当者は外出中だという。

「そうですか・・・」

(なんだかなあ。いったん帰るにしても距離があるし、かといって時間潰すのもなぁ。まったく・・・)

「申し訳ございません。」

上品そうなメイドが、深々と頭を下げる。

「いえ、あなたのせいじゃありませんから。」

「あの。お昼は、お済みでしょうか?」

「いや・・・」

「もしよろしければ、この先の湖畔に私どもの店がございますので、そちらでお食事でもどうぞ。」

「いや、それは。」

「いえ、こちらから日時を指定させて頂いて・・・。これでは、旦那様にしかられますので。」
「それに、もしかしたら担当の代わりの者にも、連絡がつくかもしれませんので。」

と、いろいろあったが、
今はチーズバーガーとチリドッグとコーヒーで昼食を済ませ、砂浜でごろ寝である。
無論、担当者との連絡がついたら、店の初老のマスターに起こしてもらう手筈になっている。

(今日は、いい日かも・・・。)

クライアントの家の上品なメイドや、オープンカフェのマスターのポカポカした笑顔を頭に浮かべて、ウトウトしていると、
ふいに、日が翳った。
それは、雲という感じではなく、もっと高密度な影であるように蘭丸には感じられた。

「ぼくと、勝負しろ。」

はるかな高みから、スピーカーの大声がする。

「・・・」

無視するつもりなのか動かない、蘭丸。

「ぼくと、勝負したまえ、きみー。」

このまま、踏み潰しかねない勢いに、やっと体を起こす。
そして、声の主である6mほどのビルドアームに向かって、ファィティングポーズをとった、生身の体で・・・。

「ぼくを舐めてるのか、きみー。」

より一層悔しがるのを面白そうに見上げながら、

「人違いじゃぁねえのか。」

蘭丸は、冷静である。

「いや、きみと勝負がしたいんだ、『ヒョウ師』=『ランメール』くん。」



次章予告


蘭丸を『ランメール』と呼ぶ、ビルドアーム。

このビルドアームの正体は?

そして、突然の挑戦を受けるのか、蘭丸よ。

この静かな湖畔に、何が起きようとしているのか・・・。

外伝 第4巻
次章:第4章 private fight 私闘

『文句(もんく)があるなら、かかってこいよっ』
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