星乱拳客伝 外伝 −三つ目−

トレーラーをすっかり暗くなったガレージに戻す蘭丸。
しかし、そこには意外な先客が。
いったい誰が、
こんな時間、
こんな所に・・・。



第2章 factory 工場


夜の道路を一台の巨大トレーラーが行く。

「すっかり、遅くなっちまったな。」

時計の表示がAMに変わってから、かなりの時間がたっていた。
次の角を曲がった所が目的地。
家である。
スピードを落として、その角を曲がると、目的地の工場には灯りがともっていた。

(こんな時間に誰だろう?)

怪訝に思いながらも、トレーラーを工場内に滑り込ませる。
工場内のスペースはかなりの広さがあり、長方形の長大なスペースは、剥き出しのコンクリートに白いペンキで1・2・3と書かれてある。
一番奥の3番が、蘭丸の定位置であったが、その手前の2番の場所には、灯りがともっており、低いモーターの駆動音がしていた。

(だれだ・・・)

ゆっくり、トレーラーを進めて行くと、そこには見慣れないビルドアームが・・・、いや。

(あいつだ。)

そのビルドアームは、蘭丸がフェイロン賭博で対戦した『ラーフェン』であった。
しかし、

(どうして、ここに・・・)

あれこれ考えていると、その胸部がガバッと開き、スイッチやらコードやらを押しのけ、まとわりつかせながら男が出てきた。

「よう蘭坊。遅かったなぁ、おやっさんに怒られるぞ。」

工場で働いている、デニスである。

「デニスこそ、こんな遅くに・・・。」

「オレ? オレは、おやっさんにことわって、こいつの修理よ。」

と『ラーフェン』のボディを叩いた。

「こないだ、ちょっとあってよ。」

灯台もと暮らし、とはこの事である。こんな近くに対戦相手がいたとは・・・。

「頭、ないじゃないですか。」

(なんか複雑だなぁ・・・。)

それは、自分がねじ切った頭であった。
そんな事に気付く訳もないデニスは手や足のコードをさばきながら、しゃべり始めた。

「頭は、そこだ。」

足下にある計測器の横にシートが掛けられた物体があるが、どうやら頭らしい。

「やっぱり、頭部にメインコンピュータが一つってのは、古いのかな?」
「駆動部からの振動とか、バランスとかの事を考えると頭が一番理想的なんだがなぁ・・・。」

「どうでもいいけど、そのスイッチだのコードだの、何とかしましょうよ。音声入力装置とかあるでしょ?」

「冗談じゃねえ。いざって時に『認識不能(エラー)です。』なんて抜かしやがって・・・。」

以前、そんな事があったのだろう、悔しそうに呟くと、

「とりあえず信用ならねぇな、あれは。」

「そんなもんスかねぇ。」

「そう、あんなもんはなぁ・・・」

長くなりそうな、気配を察した蘭丸は、

「それじゃ、オレはこのへんで。」

「そうか、そいじゃ。おやすみ。」

「じゃ。」

短く言うと、3番のスペースにトレーラーを滑り込ませた。



次章予告


それから、約1ヶ月後。

ビルドアームを客に届けた先で、待ちぼうけを食わされた、蘭丸。

時間を潰すために、訪れた砂浜に現れた黒い影。

奴は一体、何者?

外伝 第4巻
次章:第3章 beach 砂浜

『文句(もんく)があるなら、かかってこいよっ』
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