星乱拳客伝 外伝 −三つ目−
今、辺境コロニーの裏道で、
鋼鉄の巨人がぶつかり合う。
火花を散らしながら・・・。
第5章 fierce fight 死闘
夜と言うには早く、夕暮れと言うには遅い。
そんな時間。
名前も付いていない裏道に、3体のビルドアームと1体の歩ヒョウが対している。
いや、今は、2体ビルドアームと1体の歩ヒョウだ・・・。
大型のトレーラーを挟んで、2体のビルドアームと歩ヒョウ。
歩ヒョウの足下には、背中に拳ほどの窪みを穿ったビルドアームが横たわっていた。
その窪みの深さからして、中の操縦者は無事でいられまい。
そして、
「なにもんだ、てめぇ」
赤いビルドアームから声がする。
トレーラーを待ち伏せていた、自分たちを棚に上げての言葉である。
だが、数秒でスクラップにされた仲間を見せられては、仕方がないだろう。
「おまえらこそ、何者だ」
歩ヒョウから声がする。無論、蘭丸である。
ガキッ
蘭丸は、足下に倒れ込んでいるビルドアームを蹴り飛ばし、残った2体の方へ歩み進める。
「やめろよぉ、こっちくんなよぉ」
黄色いビルドアームから、気弱な声がする。
(けっ)
短く吐き捨てると蘭丸はトレーラーを一足飛びに飛び越え、赤いビルドアームに向かって跳び回し蹴りを放ちにいった。
赤いビルドアームも修羅場はくぐって来たのだろう、腰を落とし両腕を十字にしてガードする。
(さまになってるじゃねえか)
楽しげに呟くと、空中で回し蹴りを・・・。
一方、赤いビルドアームのコックピットでは、ジャンク屋の一人が、これから訪れるであろう、強烈な衝撃を身を堅くして待っていた。
が、しかし、
来るべき衝撃が来ないのを不審に思ったか、両腕のガードを若干下げた赤いビルドアーム。
その頭部カメラアイに映った三つ目の歩ヒョウの両腕は、大きく頭上へ振りかぶられていた。
その映像を認めた刹那・・・。
グワッシャーン
轟音と共に、ビルドアームの頭部と胸部の一部が吹き飛んだ。
空中で前転する要領で、その両手に握られたトンファーをビルドアームに打ち付けたのである。
そして・・・
傍らに降り立つ三つ目の歩ヒョウを呆けたように見つめる、黄色いビルドアーム。
ゆっくりと振り返る歩ヒョウの三つ目と、目が合った。
と、意外な素早さで飛び退くと、腰から何かを取り出す。
「こっちくんじゃねぇ」
取り出した小型の高分子ナイフを構えながら、ジリジリと後ろに下がる。
そうすれば、この危機から脱する事が出来るとでも言うように。
次章予告
ついに残り1体になった『ジャンク屋』。
完全に形勢が逆転したこの戦い。
どう決着を付けるのか。
逃がすか、仕留めるか。
いや、
生かすか、殺すか・・・。
どうする、『ヒョウ師』=『蘭丸』。
外伝 第3巻
次章:終 章 shadow of night 暗闇で
『文句(もんく)があるなら、かかってこいよっ』
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