星乱拳客伝 外伝 −三つ目−
BE QUICK OR BE DEAD
序 章 after the fair 祭りのあと
昼間でも薄暗い感じのする密閉型コロニー=『京香(ケイカ)』。
その『京香』に夕暮れが訪れていた。
夕焼け。
沈むこと無い作り物の太陽であっても、人間が昼と夜を必要とする限り、そのオレンジ色の時間はやってくる。
街にも、
港にも、
そして闘技場にも・・・。
バサバサッ
全身をオレンジ色に染めた男が、巨大なトレーラーの荷台にこれも巨大なシートを手際よく掛けていた。
「いやー、ご苦労さん、ご苦労さん。」
ニヤけた顔が想像できそうな声が男の背中にかけられる。
「さすがですねぇ、蘭丸さん。」
蘭丸と呼ばれた男は聞こえていないのか、シートを掛ける手を休める気配はない。
「あそこで、ああいう展開になるとは・・・・・・」
しゃべり続けるおやじを尻目に、シートを掛け終わった男はトレーラーの運転席へ歩いていく。
「・・・なんですよ、あっ、ちょっと」
おやじは無視されている事に慣れているのか、気にした風もなく男の肩に手をかけようとするが、するりとかわされてしまう。
「なんだ」
むっすりと答えて男が振り返る。
「聞こえてるんなら返事くらいして下さいよ。これギャラです。」
と、ショルダーバッグから茶封筒を取り出した。
「前回、ギャラを受け取らずに帰ったでしょ。こっちは前回分でこっちは今回分です。明細の内容と金額を確認して、ここと、ここにサインお願いします。」
無雑作に茶封筒を内ポケットにしまい込んで、書類にサインをする男=蘭丸。
「えっ、確かめなくてもいいんですか?」
「信用してるよ」
ちっとも信用していない口振りで言い捨て、トレーラーに乗り込む。
「じゃ」
そう言うと、轟音と共にトレーラーが走り出す。
ゴウォォォォォ
「あーーーーーっ」
突然、叫んだおやじは、この世の終わりが来たかのように、その場に崩れ落ちた。
「連絡先、聞くの忘れた。」
次章予告
裏通りの安酒場に集う、4人の男達。
イヤな笑いを浮かべながら、酒をくみ交わしている。
怪しげな雰囲気を漂わせる、この男達。
いったい、何者?
外伝 第3巻
次章:第1章 junk men ジャンク屋
『文句(もんく)があるなら、かかってこいよっ』
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