星乱拳客伝 外伝 −三つ目−

立ち上がるのは、はたしてどちらか?
あるいは、どちらも・・・。


終 章 shout with joy 歓声の中で・・・


どワシャーン

轟音と共にコンクリートに叩き付けられた、2体の巨大機械。
そして、

5秒。

10秒。

15秒。

静まり返った闘技場。
さらに、

5秒。

10秒。

ギシッ

先に動いたのは、『ラーフェン』だった。
六角棒を支えにしてゆっくりと立ち上がる。

おおぉーーーーー。

観客がざわめく、そして、

ギシッ

こちらも、片膝をついて、立ち上がろうとしている蘭丸。
後ろで束ねてあった放熱板を兼ねた銀髪がほどけて、うつむき加減の顔面を覆っている。

おおぉーーーーー。

さらに、観客がざわめく。

カシャン

と、堅い音を立てて蘭丸の顔面から半球形の物体が転がり落ちる。
その物体には、穴があいていた。
1つ。
2つ。
そして、3つ。
面(マスク)である。
ああ、妙にのっぺりした顔は、面(マスク)だったとは。
そして、その剥き出しになった顔は・・・。
意外な素早さで面(マスク)を拾い上げ、それを顔面に押しつける。
はたして、向かい合う『ラーフェン』と蘭丸。
蘭丸の左手は依然として顔を押さえたままだ、もう一方の『ラーフェン』は六角棒を構えてその一歩を踏み出した。

ガシャン

蘭丸は動かず、左手を顔面に、右手を前方へ突き出す様に構えている。

ガシャン

さらに近づく『ラーフェン』。
しかし、
不意に『ラーフェン』が揺れた。
いや、その頭部だけが。
はじめはゆっくりと、しかし確実に・・・。
『ラーフェン』の頭部は前に傾いでいった。

ズンッ

六角棒を杖がわりに片膝をつく『ラーフェン』。
その頭部は、数本のコードやケーブルの類で、だらしなくぶら下がっている。
蘭丸が『ラーフェン』の頭部に組み付いた時に破壊していたのである。
抱月(ほうげつ)そう呼ばれる技で・・・。
[技の名前−抱月(ほうげつ)、技の説明−敵の頭部などに組み付き全身でぞうきんを絞る要領で、ねじ切る技である。その名の通り月に抱擁するように見える事からこの名が付いたらしい。]
そして、とどめを刺すべく。
しかし、慎重に間合いを詰める蘭丸。

「まけだーーーー」

『ラーフェン』から初めて大きな声があがる。

「こうさん、こうさん。頭殺られたんじゃ、話にならん。」

先ほどまでとはうって変わったギクシャクとした動きで、退場口へ向かう。

「あんたやるねぇ、また遊んでくれよ。じゃ」

歓声で、沸き返る闘技場に勝者がコールされる。

「WINNER ランメール」


第2巻 完

『文句(もんく)があるなら、かかってこいよっ』


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