星乱拳客伝 外伝 −三つ目−

急接近する2体の巨大機械。
振りかぶられる『ラーフェン』の長大な六角棒。
ヌンチャクを片手に疾走する蘭丸。
交錯する2体の巨大機械に
どんな運命が待ち受けているのか・・・


第5章 giant and demon II 巨人と、魔人と(2)


ワァーーーーーーー

観客の歓声を受けて、2体が急速に距離を詰める。
50m、40m、30m、20m。
『ラーフェン』の六角棒が唸りをあげて襲いかかる。
一方、蘭丸の左手のヌンチャクは、未だ届く距離ではない。
左上方から突き出されながら振り下ろされる六角棒を右へ倒れ込みながらかわす蘭丸。

(もらった)

右へ倒れ込む途中、何もない筈の右手をアンダースローの要領で振る。

キュン

空気が短く鳴ったかと思うと、蘭丸の右手から拳ほどの分銅(ふんどう)がワイヤーを引きながら『ラーフェン』の頭部へ吸い込まれる。
朧(おぼろ)である。
[技の名前−『朧』(おぼろ)。
目つぶし、目くらまし技の総称である。この技が編み出された当初は、カメラ部に塗料などを吹き付ける技だった事からこの名が付いたらしい。現在は、主にカメラやそれに類する部位を小石や暗器を投擲し、破壊する技である。
また、砂や、鉄粉などを霧状にまき散らし、目をくらます技を『朧霞』(おぼろがすみ)と言う。]

こちらも、左から迫る分銅を右へ倒れ込みながらかわす『ラーフェン』。

(チィッ、やるな)

舌を鳴らし、右手のワイヤーを振って分銅の軌道を変更しようとするが、

ガッチン

狙いを外れた分銅は、ワイヤーを左肩に絡ませて硬い音を響かせた。

ぶゥオン

こちらも、右に倒れ込む事でその軌道を変更した『ラーフェン』の六角棒が風を巻いて蘭丸に迫る。

(・・・間に合わない)

いったん伸びきったと思われた六角棒が跳ね上がるようにして蘭丸に迫る。
両腕を十字にして六角棒を受ける、が・・・。

ミシィィィィッ

腕を軋ませながら、吹き飛ぶ蘭丸。
その勢いを殺さず、そのまま転がって間合いを取る。
こちらも、体勢を立て直す『ラーフェン』。
30mほどの距離を置いて睨み合う、ビルドアームと『歩ヒョウ』。

左肩に分銅とそのワイヤーを絡み付かせた、『ラーフェン』。 
左手のヌンチャクも右手の分銅も失った、『蘭丸』=『レン』。

やがて・・・

ジリジリと間合いを詰め始める『ラーフェン』。

(ちくしょう・・・)

さあ、どうする?

蘭丸。




次章予告

必殺のヌンチャクと分銅を失った蘭丸。

一方の『ラーフェン』は依然として健在だ。

如何にしてこの劣性を覆すのか、

はたまた、

闘技場のコンクリートに沈むのか、蘭丸よ。

外伝 第2巻
次章:第6章 the winner 勝者

『文句(もんく)があるなら、かかってこいよっ』

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