星乱拳客伝 外伝 −三つ目−
この勝負、受けるのか蘭丸よ。
そして、次の対戦相手とは・・・。
第1章 in the restaurant レストランにて
「蘭丸さんじゃありませんか。」
何処かで聞いた事のある、おやじ声を男は背中で聞いた。
「・・・」
声をかけられた男は、黙々とチャーハンを口に運んでいる。
「いや〜、探しましたよ、蘭丸さん。あっ、それで・・・」
薄汚れた、ショルダーバッグをがさごそやっていると、
「人違いだ。」
「へっ? またまた、そうやって。あのですね・・・」
「聞こえなかったのか、人違いだ。」
「この前は、すいません。」
大仰に謝ると、顔色の悪そうなそのおやじは、男の向かい側の席にすわった。
「次は、あんな反則野郎じゃありませんから。」
「次?」
「はい。次の対戦相手は、こいつです。」
ショルダーバッグから取り出した、くしゃくしゃの紙切れのしわをのばしながら、
「ちょっと待て。俺は『蘭丸』って奴じゃないし、対戦相手と言われても何の事だか解らない。」
「またまた。この前の闘い、納得いかなかったんでしょ?」
「・・・」
「ほ〜ら。納得いかないって顔に書いてありますよ。あれから問い合わせが殺到して大変ですよ。」
「それから、この前教えてもらった連絡先、あれ変更しましたね?全然連絡つかなくて、まいっちゃいましたよ。
そんな事はどうでもいいや。」
テーブルに広げた紙を指さして、
「こいつですよ、こいつ。次の対戦相手は。」
「・・・人違いだ」
「もう、いい加減にして下さいよ・・・。ああ、そんな怖い目で睨まないで下さい。
今度の相手は、8mちょっとの人型ビルドアームですから。心配しないで下さい。」
(8mちょっとの人型ビルドアームなら、どうして心配しなくていいんだ? え、おやじ・・・)
などど、考えていると。
ぴぴぴぴ・・・・・・
鋭い呼び出し音が、おやじのショルダーバッグから響く。
「まったく、こんな時に。日時はこの紙に書いてありますから、闘技場の南門(サウスゲート)で待ってます、じゃ。」
おやじは、男の返事を聞きもしないで、バッグをごそごそしながら店を出ていった。
(こんなんで、いいのか? 前の時もそうだったけど・・・)
残り少ない、チャーハンを口に運びながら、おやじが置いていった紙切れを見つめる。
(全身写真、名前、身長、体重、戦績か。・・・あまり役に立ちそうも無いな。)
ちらっと、ごつい腕時計を見た男は、残りのチャーハンをかき込んだ。
「俺も、仕事に戻るか。」
コップの水を飲み干すと、粒子の粗いコピーを繰り返したような紙切れを掴んで、店の駐車場へ向かった。
男は、ぽつぽつと車が停まっている駐車場を奥へと進む。
その中で一台、異彩を放っている10mほどの巨大トレーラー、そこへ向かうこの男。
ガチャ、ドンッ。
男の乗り込んだトレーラーのドアには、大きくこう書いてあった。
『サカキ・ビルドアーム・リペア・センター』
男の名前は、榊・蘭丸(さかき・らんまる)。
男の職業は、ビルドアーム修理業。
そして・・・。
男の副業は、フェイロン賭博の闘士。
三つ目の『歩ヒョウ』=『レン』を駆る『ヒョウ師』=『蘭丸』であった。
次章予告
何かに導かれるように、闘いに向かう蘭丸。
格闘家の血が騒ぐのか・・・
はたまた、ヒョウ師の血がそうさせるのか・・・
今再び、闘技場の土を踏む一人の『ヒョウ師』。
次の闘いは、どう攻め、どう受けるのか蘭丸よ。
外伝 第2巻
次章:第2章 return of the demon I 魔人、再び(1)
『文句(もんく)があるなら、かかってこいよっ』
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