星乱拳客伝 外伝 −三つ目−


序 章 in the elevator エレベーターにて


低いモーターの駆動音と微振動が、囲いのないエレベーターのプラットフォーム上に響く。
ゆっくりと降下を続ける暗いプラットフォーム上で、立て膝をついている黒い人影があった。
しかし、非常灯の緑光にうっすらと照らし出された足、腰、手、肩、そして顔。
その顔にはなんと目が三つあるではないか。

カラカラ・・・・・・

乾いた音を立てて、その胸部から腹部にかけて観音開きに開く。
いや、ほどけると言った方が合っているだろう。
不意に足下から現れた人影がその膝や手を伝ってするりと、腹部に滑り込んだ。

カラカラ・・・・・・

開いた時と逆の順番で閉じてゆく。
今、身体の中に吸い込まれたのが人間だとすると、この人影は5メートルを下ることはないだろう。
その巨体が完全に元の形に戻ると、その姿に似合わず静かに立ち上がり始めた。
『歩ヒョウ』。
これは、そう呼ばれている人型の乗り物であり、『歩ヒョウ』に乗り込んだ人間は『ヒョウ師』と呼ばれる人間である。
この『歩ヒョウ』と『ヒョウ師』を乗せた、巨大エレベーター。
果たして、何処へ向かうというのか・・・。
エレベーターは未だ止まらない。



次章予告


食事中に不意に声をかけられた男、蘭丸。

声をかけてきたのは、あのマッチメーカーである。

「次の対戦相手は、こいつです。」

写真と文字の書かれた、皺だらけのコピー用紙を差し出すマッチメーカー。

この勝負、受けるのか蘭丸よ。

そして、次の対戦相手とは・・・。

『文句(もんく)があるなら、かかってこいよっ』

外伝 第2巻
次章:第1章 in the restaurant レストランにて


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