星乱拳客伝 外伝 −三つ目−

薄暗い退場口に消えていく三つ目の魔人。
その沈黙は何を物語るのか、
熱気でむせ返る闘技場にそれを知る者はいない。

終 章 in the dark 闇のなかで


今や、スクラップ同然の6本+1本のアームを持っていたビルドアームが、別のビルドアームに退場口へと引きずられてゆく。
そんな、闘技場の様子を巨大なガラス窓から冷ややかに見降ろす、4人の人間がいた。ここは、薄暗いVIP用のボックス席の中である。しかし、この4人のとりあわせは一体・・・。

「楽しいものを見せて頂きましたね。」

マグカップのミルクを飲みながら話すこの少年。16、7才と思われるが、何処にでもある赤いチェックのシャツとジーンズ姿でこれといった特徴はない。

「はい。」

短く、応えたのは禿頭の男であった。この男、頭だけでなく眉や睫毛、髭まで、見えている部分の本来あるべき毛が一切無い。

「血が騒いだでしょう?」

からかうように、少年が問い掛けると、禿頭の男が、

「ご冗談を私は・・・」

禿頭の男は続ける言葉を失ったらしい。

「ごめん、なんだかいじめてるみたいだね。」

少年は、悪戯っぽく笑うと、

「そうだ、この試合のVTRを彼女に見せたら喜ぶだろう。至急、木星まで送ってあげてよ。」

そう言いおわらないうちに、ピシッとしたワインレッドのスーツに身を包んだ女が、

「おやめ下さい。そんな事したらあの子、飛んで帰ってきますわ。」

舌をぺロッと出して少年は、

「そういえば、退屈で死にそうと言ってたっけ。」

ぴぴぴっ、ぴぴぴっ、ぴぴぴっ

携帯電話の呼び出し音が響く。
今まで、一言も発していない男が内ポケットから携帯電話を取り出し、短いやり取りをかわす。
しかし、この男も異様である。この暗がりの中でサングラスを掛けている。そして、異常に肌の色が白い、まるで深海魚の様な白さである。
少年に短く耳打ちすると、この部屋を出ていった。

「みんな、大変だね。でも、みんなのお陰なんだよね、僕がこうしていられるのも・・・」

「そんなこと、おっしゃらないで下さい。」

スーツの女が言う。

闘技場が騒がしい、どうやら準備が出来たらしい。

「さあ次の試合の、始まりだよ。」

闘技場の方へ向き直って、少年が言う。

「あっ、それから。さっきの試合のVTRと、三つ目の歩ヒョウの資料を一通り、僕の部屋に届けておいて。ちょっと興味があるから・・・」

そう言って微笑む、少年。
しかし、その笑顔の何と不気味なことか。
その微笑みを一度見た者は二度と安らかな眠りにつくことはあるまい。
邪悪にひき歪んだ唇、悪鬼のごとき瞳。まさに、悪魔が微笑むならばこんな微笑みを浮かべるであろう、そんな微笑みだった。




『文句(もんく)があるなら、かかってこいよっ』
You have a break till the next game..., did you have a pain? certainly yes.
but, it's so sweet wasn't it?



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