星乱拳客伝 10周年企画 十二拳聖ネモ 外伝版



シーン19

「まぁな、『死んだ』ことになってる」
ギースは自嘲気味に笑うと腰の大剣でクワンを制した。
「そっちのもそのまま聞いてくれ」
只ならぬ雰囲気を察知したのであろうクワンもまた腹部の纏いを解いた。
ネモ、クワン、両者の顔を確認してからギースは話し出した。
「死人からの忠告だ。黙って聞け」
「詳しいことは言えないが、この試合には裏がある」
「このまま、お前が戻った場合は、周囲を固めたビルドアームに袋叩きか、帰りのシャトルが偶然事故って段取りだ」
「だから1時間ほど前からこの辺一帯を監視している監視衛星は『偶然』故障している。ま、そういうこった」
「ネモ。お前の負けだ、いいな」
不服そうなネモをまあ落ち着けとなだめてから、
「まぁ黙って聞け」
「今、問題なのはお前が仕切ってるコロニーだ。おエライさんはあのコロニーにお前みたいな鼻薬の効かないゴロツキにいてもらっちゃ困るんだ」
「仮に今回の作戦が失敗したとなれば、もっとアクドイやり方になるだろう」
「お前も手下を抱える身だ、ここは引け」
「それからクワンさん、あんたも身を隠したほうが良い」
「できれば、クワンの名はもう使わないほうがいいだろう」
「残念だがこれは、そういう類(たぐい)の話だ」
よく響く低音でギースはそこまで一気に話終えた。




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