星乱拳客伝 10周年企画 十二拳聖ネモ 外伝版



シーン14

23世紀。
テラフォーミングによって立ち入り禁止であるはずの地球に彼等はいた。
ニューヨークマンハッタン。
かつて摩天楼と呼ばれた高層ビル群の灯りは消え、巨大な人類の墓標が如く未だその威容を誇っていた。
セントラルパーク。
かつて都会のオアシスであった人工の公園は人工物であるがゆえテラフォーミングの特別区域として指定され人類の存在が許されていた。
しかし。。。
彼等は人類であったのか。
身長5メートル以上はあろうかという巨人。
歩ヒョウ。
彼等は人が操る人型の甲冑であった。
セントラルパークのほぼ中央。
その野球グラウンドに仁王立ちの歩ヒョウ。
ネモであった。
コロニー「ニューラダック」その治安維持活動についての認可をかけて闘う男。
そして、ネモの左前方の木立の間から姿を表した、別の歩ヒョウ。
クワンであった。
ヒョウ局と呼ばれる、彼等ヒョウ師の仕事を斡旋するところから派遣された男。
闘う背景はそれぞれ違うが、その目的は同じ。
勝利
である。
チッチカチカ
ネモの歩ヒョウが光を放つ。
歩ヒョウ独特の通信方法、光信である。
通信内容は『我ト立チ合エ』
歩ヒョウ同士が闘う場合、このようなやりとりを行うことになっている。
(ほほぅ、以外と律儀なんだな)
ネモの悪行を聞いていたクワンは苦笑しつつチカチカと返信する。
粗暴で野卑ではあったが、決して礼儀知らずという訳ではないネモはこの辺、妙にまじめですらあった。
(さて。。。いくか)
自分の風評など意に介さないネモのほうは仁王立ちの歩ヒョウの中で、指をボキボキ鳴らしながら楽しそうであった。




(c)General Works