星乱拳客伝 10周年企画 十二拳聖ネモ 外伝版



シーン13

クワンは走っていた。
正確には、クワンと同じ名の『歩ヒョウ』=『クワン』が走っていた。
森の中、移動を始めたクワン。
しばらく行くと、開けた丘が見えた。
野球のグラウンドがあった場所である。
さすがに、ここまで手入れはしていないようで雑草が伸び放題になっている。
(まだ、ここまで来てはいないだろうが。。。)
クワンはグラウンド西側の道を更に南下する。
左手にテニスコート、その向こうに巨大な貯水池が現れた。
この貯水池を突っ切る方法もあったのであるが、流石に無防備すぎるような気がして西側を通るルートを選択したクワン。
相手はあのネモである。
クワンは貯水池横の舗装された道を高速で移動していた。
それは静かな移動であった。
クワン独自の走法である。
滑るように移動する様は、水面の水鳥のようであった。
(そろそろか。。。)
貯水池を左後方に、先ほどとは別の野球のグラウンドを左前方にしたあたりで木立の間に身を伏せたクワン。
眼を凝らせば右前方に目的のオブジェが見える。
(さて、どうでる?ネモ)
目的のオブジェからゆっくり視線を左へ移動してゆく。
。。。と。
(そういうのもアリなんですね)
苦笑まじりにつぶやくクワンの視線の先には、仁王立ちのネモの『歩ヒョウ』=『シンバ』が確認できた。




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