星乱拳客伝 10周年企画 十二拳聖ネモ 外伝版



シーン11

エミリオ・グラニカはセントラルパークに面した旧メトロポリタン美術館の裏庭で空を睨んでいた。
(ジジイども。。。いいように使いやがって。。。)
『会議』に集った6人の『指導者』のうち、いまここにいるのはエミリオだけであった。
「医者から止められていてね」
「その日は都合が悪くてな」
「地球の重力は苦手で」
説得力のない理由でも目下のものを納得させるには十分な効果があった。
「それでは、私がまいりましょう」
内心の怒りをおくびにもださずエミリオが言うと、彼等は口々に心のこもっていない労(ねぎら)いの言葉を吐いた。
(まぁいいさ、今は新参者だ。。。)
とある『事業』を仕切る『指導者』達。
最近、その『指導者』の一員に加わったエミリオには仕方のない役回りであったのかもしれない。
「準備ができたようでございます」
びくりとして声を方を向くと、男が立っていた。
ダイス・クライハート。
エミリオが『指導者』に加わった時には既にいた男である。
『指導者』達の無理難題を片付ける、なんでも屋であった。
「ああ、そうか」
エミリオがダイスの方を向いて、そう言うとダイスは優雅といってもいい仕草で頷く。
(この男。。。ほかの5人よりも曲者かもしれない。。。)
「始めてくれたまえ」
エミリオは「始めろ」と言うつもりが「始めてくれたまえ」と言ってしまったことに気付いていなかった。




(c)General Works