星乱拳客伝 10周年企画 十二拳聖ネモ 外伝版



シーン9

セントラルパークを走る2台の車。
ネモとクワン、それぞれを乗せた車は悪路走行も可能な無骨な車に変っていた。
先行するのはネモの車。
快適とは言えないまでも、そこそこの乗り心地を確保しつつ車は進む。
セントラルパークは特定区域に指定されているため、ある程度の整備が許されていたためである。
程なくして車はスピードを落とした。
「ご確認ください」
車が止まるとガチャリとドアが開けられ、空港から一緒のあの黒スーツが外で待機していた。
「へいへい」
と外へ出ると、車の5メートルほど先に鉄塊がそそり立っていた。
5メートルはあるだろうか、錆びた剣のオブジェである。
視線を右へずらすと、クワンも同じように剣を見上げていた。
この剣はオーストラリアの建築家テリー・ボガードによって2200年代に人類の攻撃的な文明の象徴としてその地球上での恒久的な破棄を願って作成された代物である。
「こいつ動かせるんだろうな?」
ネモは巨大な剣に視線を戻しながら黒いスーツの男に問う。
「はい、固定用具は全て取り外してありますので、地下3メートル分を引き抜いていただければ移動可能です」
周囲を確認すると剣の周辺には固定用具なのであろうアンカーが円を描くように撃ち込まれていた。
恐らくワイヤーで固定されていたものだろう。
「それでは、まいりましょう」
黒いスーツの男が促すとネモは後部座席へ戻った。
(こりゃこいつを担いで駈け込むって訳にもいかねぇようだな)
密かに「目印」を速攻で奪取して闘いを避ける算段をしていたのである。
バタムッとドアが閉じられると車は走り出した。
(やりあう他ねぇってか)
ネモは苦笑しつつ頭を掻いた。




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