星乱拳客伝 10周年企画 十二拳聖ネモ 外伝版



シーン8

ネモがセントラルパークから旧メトロポリタン美術館裏へ戻ると何人かが席についていた。
遅刻という時間ではなかったが、かなり際どい時間ではあった。
指定されていた席へ一旦座り、お茶を一杯と腰を浮かせかけた時、
「そろそろお時間のようですので始めさせていただきます」
正面左側に立ったスーツ姿の男が司会進行役なのだろう、よく通る声で言う。
ここに集まった人間は10人程度。
集まった目的を考えると少ない人数であるように思われた。
「今回の趣旨はご理解いただけているかと思いますので、その辺のご説明は省かせていただきます」
男が話し始めると序々にざわつきが収まってゆく。
「ネモ、クワン こちらへ」
名前を呼ばれて立ちあがったのは二人の男。
身長190cmはあろうかという大男のネモと東洋系の油断無い目つきをした男クワン。
互いが互いを値踏みしつつ互いの隣に立つとネモの巨漢が際立つ。
「理由はそれぞれだろうから、その辺にも触れないでおきましょう」
司会の男がネモとクワンにだけ聞こえるように声のトーンを落として言う。
「さて、今回の闘いのルールです」
「試合開始時にセントラルパークの南北に分かれ、試合開始と同時に行動開始」
「両者の中間地点に設置されている目印・・・後ほどご案内致します・・・をメトロポリタン美術館裏へ持ってきた方の勝利とします」
「また、セントラルパークから一歩でも外へ出れば、逃亡とみなしその場で負け」
「周囲の道には5ブロックごとにビルドアームが配置されており、監視しています」
「万一逃走した場合、そのまま地球へ置き去りにされますので、ご注意ください」
「何かご質問は?」
10秒ほど待って質問が無いことを確認すると、男は古いコインを取り出した。
「南北どちらかをコイントスで決めましょう」
男はコインを弾くとクルクルと舞い上がった。
「表か裏か、どちら?」
落ちてきたコインを器用にキャッチした男は手で隠したコインの表裏を問う。
どちらが答えたものか、互いに視線を交わすネモとクワン。
奇妙な間の後、ネモが「表だ」と答えると、男がコインを確認した。
「表ですね、では、ネモさん北と南、どちらにしますか?」
男の問いに、
「んじゃ南にしとくかな」
ネモが答えると、
「それでは私が北ですね」
クワンが続ける。
それでは開始位置に移動してくださいと男が促すとそれぞれが用意されていた車へと誘われていった。
(勝負は時の運と言うが。。。な)
男はネモとクワンの背中を見送りながら、何かを考えていた。




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