星乱拳客伝 10周年企画 十二拳聖ネモ 外伝版



シーン1

そこは会議室というには、あまりにも豪華すぎた。
歴史を感じさせる調度品。
明るすぎない光源は天井のシャンデリアであった。
20人は座れるであろう楕円形の大きなテーブルを囲むのは7人の男。
座っているのは6人。
場違いな投影式スクリーンの横に立っているのが1人。
命令する者と命令される者が、それぞれ相応しい場所にいた。
「。。。で、どんなのを用意するのだね?」
威圧感のある声。
左から2番目の男の居丈高に命令する口調は不機嫌そうであった。
「はっ、あまり有名どころでありますと、後々何かと不都合もございますので」
命令する者の口調に慣れているのであろう、スクリーン脇の命令を受ける者はキビキビと説明する。
「あぁぁぁ、そういう事はいい。用意できてるのか?」
眼前に煙たいものでもあるかのように、ぶんぶんと大仰に手を振りつつ言うのは一番右の男である。
「はっ、手頃なのを見繕ってございます」
資料はこちらに、と配られたA4のコピー用紙に眼を通すものは無かった。
「ミスは許さんよミスは」
コンコンとテーブルを指で叩きながら吐き出された言葉にスクリーン脇の男は、
「お任せください」
と、深々と一礼した。
誰にも見えない角度で男が浮かべた表情は、この場にいる誰にも見せてはいけない笑みであった。




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